- SpCSMの定義
- SpCSMの重要性
- 組織内におけるSpCSMのあるべき配置
はじめに
みなさん、こんにちは。
先日、海外のブログで、「SpCSM」という言葉を目にしました。その名称自体は目新しいものの、従来からカスタマーサクセスにおいて非常に貴重かつ重要と考えられてきた人材ですので、少し掘り下げていきたいと思います。
SpCSMとは?
上述の記事でも説明がある通り、SpCSMとは“Specialized Customer Success Manager” の略で、具体的には、プロダクトがターゲットとする市場・業界・職種での経歴を持つCSMを指しています。
自分もまさに法務職を経験したのちリーガルテックのCSにキャリアチェンジしているので、SpCSMたり得ることになります。特に職種や業界に特化したようなプロダクトを展開しているカスタマーサクセスにおいては、(名前こそ目新しいものの)従来からその存在の重要性は認識されていました。
なぜSpCSMが重要視されるのか?
上記のブログでは、SpCSMは”A higher-level CSM position”とされ、CSMの上級職といった表現のされ方をしています。それはなぜなのでしょうか?
カスタマーサクセスにおいて最も習得が難しいナレッジ
以下の記事では、CSMには①自社プロダクト・サービスに関する知識と②顧客に関する知識、③カスタマーサクセスに関する知識の3つの知識が必要である旨まとめました。
カスタマーサクセスにおいて必要な3つの知識とは? ぞれぞれの知識の学び方 それぞれの知識を組織内で浸透させるためのマネージャーの役割 みなさん、こんにちは! 今回は、カスタマーサクセス(以下「CS」)を始[…]
この中で最も重要なのは、顧客理解に直結する②顧客に関する知識だと思われますが、習得が最も難しいのもこの顧客に関する知識です。もちろん公開情報や顧客からヒアリングをすることで、これを賄うことは可能ではあるものの、経験がない方からするとその習得には、非常に多くの時間が必要になります。
顧客に関する知識のインプットをほぼショートカットできるSpCSM
ここで、SpCSMはプロダクトのメインターゲットとなる層の経験・経歴を持つ方になるため、(一部の最新の議論を除いて)顧客に関する知識を別途インプットする必要性がほとんどありません。つまり取得が一番難しい知識のインプットをほぼ「オールショートカット」できるのです。
これは、いち CSM としての立ち上がり(オンボーディング)のスピードを非常に上げるというメリットがあると同時に、顧客と同じ目線や同じ悩みを、顧客の言葉で自然と理解し、表現できるというCSMにとってはいわば最高のスキルセットがあることになります。
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「元ユーザー」の価値とは?
ちなみに筆者は、今のCS職に就く前は、そのプロダクトのユーザーでもありました。
つまり前職の時点でターゲットとなる属性を持っていたとともに、当該プロダクトのユーザーという属性も持っていたため、最初から②顧客に関する知識のみならず、①自社プロダクト・サービスに関する知識もほぼ保有した状態でCSMとしてのキャリアをスタートすることができました。
既存顧客から引き抜きをするようなアクションは、必ずしも褒められたことではありませんが、「元ユーザー」は少なくともオンボーディングにおいては、そのスピードで本当にチートになり得、企業にとって非常に良い採用になる可能性が高いため、可能性は探ってみると良いでしょう。
ちなみに筆者は、そのまま「ユーザー」として繋がりを継続することに向いている方と実際にSaaSベンダーの方に入って頂いた方が輝く方がどちらもいらっしゃると認識しています。その詳細はまたどこかでまとめたいと思います。
組織内におけるSpCSM
PMF前後に一人いると最高
顧客属性を持っていたSpCSMは、もちろんどのフェーズにおいてもその存在は非常に重要です。
筆者は、中でもプロダクトの方向性が一定程度定まり、また顧客のサクセスの事例をN=1で大切に積み上げていくことが求められる、 PMF 前後のフェーズでは非常に力を発揮してくれるのではないかと考えています。
というのも企業としては、プロダクトを磨き上げるタイミングで顧客となり得る(なった)方々にヒアリングを重ねていきますが、その際に彼らの言葉やリアルな課題・悩みを翻訳できる力は非常に貴重です。特に初期は本当にリソースが限られているので、CSだけでなく、プロダクトやマーケティング分野でも重宝されるでしょう。
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では、SpCSMだけでチームを構成すれば良いのか?
筆者個人としては、SpCSMの重要性は、企業がどのフェーズにあったとしても薄らぐことはないと考えています。
ただ、CS組織の全員がSpCSMに相当するメンバーであることは必ずしも良いことではないとも思われます。
その理由のまず一つ目は、そのようなチーム編成を行うことは、(採用市場にいる候補者にキャリアチェンジを迫る必要がある点で)採用の難度が一般的に上がり、本当に必要なメンバーの数を確保できなくなるおそれがあることです。勿論妥協して採用する必要はありませんが、必要なメンバー数が揃わず、結果として顧客に十分なサービスを提供できないのであれば、本末転倒です。
またもう一つの理由として、チームとして思考が固定化されてしまう可能性がある点が挙げられます。
似たような経歴を持つ方を集中的に集めると、発想や思考パターンの傾向は似かよるため、組織としての方針や考え方は統一しやすくなります。ただその一方で、新鮮な発想が生まれにくくなる懸念があります。
このため、筆者としては(採用さえ叶うならという前提ですが)、SpCSMがチームの6-7割程度を占めるような組織構成にするのが良いのではないかと考えています。
まとめ
前述の通り、私自身は、ターゲットとなる顧客属性を持ち、また元ユーザーでもあったため、確か入社日から新たな機能の仕様に関する議論に参加して意見を出しており、(勿論メンバーの協力もあってのことですが)本当にキャッチアップは早く行えたと記憶しています。
個人的には、こういった経歴を持った方が多く入ってきて、カスタマーサクセスを盛り上げてくれたらと願っています!