カスタマーサクセスが旗手となる!組織の「顧客理解」を深める方法

  • 組織全体での顧客理解が重要な理由
  • カスタマーサクセス起点で、顧客理解を組織全体に浸透させる方法

はじめに

みなさん、こんにちは。

先日、マーケティングの文脈で、以下の記事を発見しました。

MarkeZine

 すべての企業活動には、その相手となる顧客が存在する。しかし、日々増えていくマーケティングの手法に執心するあまり、本当の…

この記事の中では、「顧客起点」をキーワードとしながら、企業が顧客理解が不十分になる原因として、

  • 顧客の心理
  • 多様性
  • 変化

を見失いがちであることが指摘されていました。これは企業(文化)の問題といえばそれまでですが、筆者個人としては、カスタマーサクセスが改善の旗手として貢献することができるのではないかと思い、その方策についてまとめていきます。

顧客理解の重要性

言うまでもないですが、どの事業においても「顧客理解」は非常に重要です。

というのも、(特にBtoBの場合)顧客は何らかの課題を解決するためにプロダクトやサービスを購入するのであり、その課題が理解できていなければ、提供するプロダクトやサービス、これらを届けるメッセージもズレたものとなってしまうということが根底にあります。

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それだけでなく、近年は技術のコモディティ化する速度が速く、機能やサービスの内容自体で競合との差を生むことが業界によっては困難になりつつあります。このため、深い顧客理解を前提として、次にどんな機能・サービスを、どんな順番で、どのように実装するかが重要なファクターとなり得ます。

顧客理解を組織全体に浸透させる方法

ミクロな顧客理解 -全てはサクセスした顧客から-

まず、顧客理解の出発点は、特定の顧客を理解することにあると考えています。
つまり、前述の記事でも言及がある通り、N=1の顧客、特に自社として最もサクセスしていると考えている企業のことを深く理解することから始まるのです。

この理解を促す方法としては、社内のCS以外のメンバーに当該顧客との打ち合わせのZoomの録画などを見てもらう、でも勿論良いのですが、顧客とのミーティングへの参加が最も直接的でオススメです。リアルイベントへの回帰が進みつつある2023年2月時点では、ユーザー会への参加も良いでしょう。

例えば、CSの定期ミーティングへ同席するなどして、今顧客がプロダクトに対して感じているポジティブな感情、その反面、課題と感じていることを聞きたいところです。普段直接顧客と接する機会が非常に限られているマーケティングチームや開発チームのメンバーにとっては、見失いがちとされていた、顧客の心理がよりリアルに印象に残るのではないでしょうか。

顧客とのミーティングへの参加をより有益なものとするには?

よくこういったミーティング参加で見られるのは、ミーティングの参加が目的になってしまい、「参加して終わり」というケースです。これではそれぞれのメンバーの思考にも広がりが生まれません。

やや工数がかかる取り組みですが、カスタマーサクセスを含めて参加したメンバーと別途30分でも時間をとり、ミーティングへ参加して感じたことを共有し、振り返る機会を設けるのが良いと考えています。自分の感想や考察を言語化することで、各人が感じたことがより定着し、これが次のアクションにインサイトとして活かされることが促進されます。

マクロな顧客理解-顧客の同質性と多様性を知る-

顧客となる方は、提供しているプロダクトやサービスで解決できるような課題を持っているという点では共通ですが、マクロレベルでも多様性を持っているものです。例えば、業種業界や企業規模(SMBなのかエンタープライズなのか)、持っている抽象的な課題など、各顧客がプロダクトやサービスの「外」で持っている属性・特性は多様です。

顧客理解は採用から?

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こうした点の把握は、敢えて個々の顧客ごとに見るのではなく、データとして俯瞰的に見るのが適切です。これらのデータだけでも顧客属性の把握には十分役立ちます。特にリードを創出するためにマスに対してのコミュニケーションが多いマーケティングチームには、受注している顧客の傾向を掴むのに有益でしょう。まさにカスタマージャーニーが循環するのと軌を一にするイメージですね。

顧客のライフサイクルのイメージ(https://saas-mgr-lab.com/customer-journey/より)

更に、上記のような顧客の属性・特性に関するデータを、皆さんの企業のプロダクトやサービスを使うことで取得した以下の記事にあるような情報と組み合わせることで、CSやプロダクトやサービス開発チームにとって、顧客の共通点と多様性を把握するのに非常に有益な情報にもなります。

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上記いずれのデータについても、昨年と今年の比較のように、時間軸で分析をすることができれば、顧客の変化を掴むことができます。例えば、昨年はこういった課題を持って契約してくれた顧客が多かったが、今年はその割合が減ってきて別の課題の割合が高まっている、といった具合です。

CSチームとしては、CRMやエクセル、スプレッドシートなどを使ってこういった情報を他のチームに定期的に共有できる体制を(場合によっては、 Ops チームと協働しながら)構築できると理想的です。

まとめ

カスタマーサクセスという機能が、部署に紐付き、顧客とのコミュニケーションが集約されたことで、業務としての合理性は上がりました。その一方で、情報が集約されすぎて、他のチームにとって重要な顧客に関する情報が会社全体に行き渡りにくくなる、という事態が発生するおそれがあるなと個人的には感じていました。そういった中で冒頭で引用した記事が提起している課題意識は、個人的には非常に納得できるものでしたし、カスタマーサクセスとしては、社内に如何に情報を環流させるかをしっかり考える必要があるなと考えさせられました。