カスタマーサクセスは不要?!社内プレゼンス向上のためのCSのアピールポイント

  • カスタマーサクセスの社内におけるプレゼンスの現状
  • カスタマーサクセスの存在価値の代表例

はじめに -カスタマーサクセスは不要?プレゼンスは低い?-

みなさん、こんにちは!
さて、先日以下のような調査結果が発表されていました。

Web担当者Forum

いわゆるサブスクリプション(リカーリング)商材の取り扱いのない企業も含まれているため、この結果自体がカスタマーサクセス(以下、CS)にとっての大きな懸念にはならないとは思います。しかし、その一方で、まだまだ市場全体や社内においてCSを正しく評価しきれているかというと、その点は途上にあると筆者は考えています。

こういった背景から今回は、改めてCSのプレゼンスを高めていくために、改めてCSの存在価値やアピールポイントをまとめていきます。

CSの存在価値①:顧客をよく知っていること

現在は、インターネットを介した情報の提供と交換が充実し、顧客が自らサービスやシステムの導入判断に十分な情報収集をすることが可能になりました。これによって従来の情報の偏在の傾向はなくなり、サービス提供者側は顧客に選んでもらえるように、より「顧客中心」の意識を高めることが必要になってきたと言われます。

上記のような背景から、顧客をよく知っていること、知ろうとすることが今まで以上に重視されています。もちろんその先頭に立っているのがカスタマーサクセスです。顧客を知っているという点に関しては、具体的には大きく2つの価値に分けることができるでしょう。

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a.「顧客の課題とその変化」を知っている

営業活動においても顧客とのコミュニケーションが発生するため、顧客(に近い将来なる方)が持っている課題を認識することは、営業チームでも可能でしょう。しかし、顧客自身の状況や取り巻く環境は刻一刻と変化します。このため、受注時の課題がその後も解決対象となる課題であり続けるとは限りません。むしろその課題を解決するためにみなさんのプロダクトやサービスを購入しているのだから、むしろ顧客の課題は、導入後に変化すると考えるのが自然でしょう。

このように、顧客の課題の変化をリアルタイムに知ることができるのは、CSの存在価値であり、強みです。

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b. プロダクトの進化のための手がかりを知っている

CSが理解した顧客の課題やその変化を解決できるのは、サービスやプロダクトです。つまり、課題を認識したCSは、その課題をより本質的に解決できるようにするためのサービスやプロダクトの進化の手がかりを知っていることとイコールと言えるでしょう。

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SaaSのプロダクトは、改良を重ねることが前提にあります。こうした中でCSは顧客がプロダクトをどう使い、また刻々と変わる課題を解決するために何をプロダクトに求めているのかを直に知ることができるポジションに陣取っています。その存在は非常に大きな価値といえるでしょう。

「顧客のことを知る」ためには何が必要か?

ここに解を持っていない CSM の方はあまりいないかもしれませんが、何よりも顧客とコミュニケーションをとっていくことが全てになると思われます。

昨今は、テックタッチに代表されるように、より効率的に顧客とのタッチポイントを作っていくことの重要性が説かれていますが、これも含め、いかに顧客と数多くの有益なコミュニケーションが取れるかが、「顧客のことを知っている」密度に直結します。ハイタッチもテックタッチも上手く混ぜながら情報の密度を向上していくことがCSチームに必要な基本的取り組みです。

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CSの存在価値②:事業の効率的な成長に寄与できる

「顧客をよく知っているだけ」では、社内サポーター止まり

上記のような、顧客の状況把握は、その情報自体にも価値はあるのですが、それよりも情報がセールスチームなどのThe Model(ザ・モデル)の上流チームやプロダクトチームに環流することでより効果を発揮するものです。決してそれが悪いという趣旨ではないですが、これではCSは他のチームのサポート部隊に止まってしまい、必要性は一定程度理解されても、プレゼンスは上がりません。

言い換えるとよりCSのプレゼンスを高めるためには、誰の目にもわかる事業の成長や収益向上への寄与がキーポイントになるでしょう。上記の記事でも、「カスタマーサクセス」へ取り組む価値として34.4%の方が「利益向上」と答えているのがその証左です。

「NRR」がCSの存在価値を示す手段

CSがきちっと会社や事業の成長、利益向上に寄与できていることを示すには、前述の通り、結局のところ数字が全てになります。

そして、ことリカーリングモデルをとるビジネスにおいては、獲得した既存顧客が、きちんと MRR のレベルで成長しているかを示す NRR が重要になります。

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もしこれが100%を切っていたり、102-3%といった水準で、わずかしか伸びが見られないようであれば、CSの貢献度を社内に明確に示すのは少し難しいでしょう。しっかりと社内にアピールできる数字になるように、NRRを構成する主要な要素であるチャーンレートの改善、またはアップセルの獲得量向上に向けた具体的施策が、CSの存在価値をしっかりと社内に感じてもらい、プレゼンスを向上させる重要なポイントになります。

顧客獲得のコスト( CAC )は、新規獲得の場合よりも既存の顧客からのアップセル・クロスセルの方が低く済むことが定説となっています。NRRで安定的な数字を出すことができれば、昨今の不確実なマーケットにおいて特に重視される「効率的な成長」にCSが貢献していることを示すことができるでしょう。

まとめ

日本では確かに、カスタマーサクセスの認知度と重要性に関する認識が少しずつ広がって来ていると筆者は感じていますが、まだまだ一部の界隈の中での盛り上がりに止まっているようにも思われます。

他方で、カスタマーサクセス発祥のアメリカですら、(規模は違いますが)CSに対する投資はまだまだ十分とはいえない状況のようです。非常にハングリー精神が見られます。

我々も本記事で取り上げた調査内容が、数年後には大きく変わっているように、日々地道にチャーンレートの改善やアップセルを積み上げていきたいですね!