CSの収益貢献度がわかる!重要指標NRRの使い方と注意点

  • NRRの計算方法
  • NRRが重要視されている理由
  • NRRを活用する際の注意点

はじめに

みなさん、こんにちは!
今回は、カスタマーサクセスにおける超重要指標とされる「NRR」(エヌアールアール)について、その内容と活用方法についてまとめていきます。

カスタマーサクセスに必要な指標の全体像はこちら!

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NRRとは

NRRとは、Net Retention RateまたはNet Revenue Retentionの略で、既存顧客が契約している金額(売上)が、一定期間経過後、どれくらい変化しているのかをキャッチするための指標で、特に昨今のSaaSビジネスにおいて非常に重視されています。日本語では「売上継続率」と訳されます。

このNRRについては、各種記事でも解説されていますが、月次で集計する場合と年次で計算する場合のどちらも紹介されています。後述するように目的に応じて使い分けるのが良いでしょう。

NDRとの違いは何か?

NDRとは、Net Dollar Retentionの略で、同様に、既存顧客が契約している金額(売上)が、一定期間経過後、どれくらい変化しているのかをキャッチするための指標となります。本稿で取り上げているNRRと同じ指標として扱って構いません。

NRRの算出方法

以下の事例(図1)に基づいて、NRRの計算方法について見ていきます。

図1:月初時点でのMRRは100、月内の解約された金額は20、月内の増加した金額は50、というケース(単位は略)

まず、NRRは、既存顧客の現在の月次売上、つまり MRR の合計を、比較対象となる起算時点のMRRの合計で割るという計算式になります。

対象はあくまで「既存顧客の」MRRなので、考慮に入れるのはチャーンした金額(期間内解約MRR)とアップセル・クロスセルした金額(期間内増加MRR)であり、新規受注した顧客のMRRをこの計算には含めないことに注意が必要です。
上記の図1の場合には、対象期間にておけるNRR130/100*100=130(%)ということになります。

次は、下の図2を使って、もう少し具体的に見ていきます。

図2:2021年6月から2022年7月時点までの各社のMRRの推移

年間でのNRR算出

年単位でのNRRを算出したい場合には、直近1年において新規受注した企業は含めずに

1年前の時点で契約していた顧客の現時点におけるMRRの合計)/1年前におけるMRRの合計)*100%
という計算式となります。
上記の図2の事例では、2022年6月における年間でのNRRを算出する場合には、2021年6月時点で既に契約があった、A〜D社が計算対象となり、(50+0+60+20)/(40+20+30+10)*100=130(%)となります。

月次でのNRR算出

一方で月単位でのNRRを算出したい場合には、今月に新規受注した企業は含めずに、
(先月の時点で契約していた顧客の現時点におけるMRRの合計)/(先月におけるMRRの合計)*100%
といった計算式となります。
上記の図2の事例では、2022年7月における月間でのNRRを算出する場合には、2022年6月時点で既に契約があった、A〜F社が計算対象となり、(80+0+0+40+30+50)/(50+0+60+20+40+30)*100=100(%)となります。

NRRの意味と、重要視されている理由

リカーリングモデルが正しく機能しているかがわかる

売り切りではないサブスクリプション、リカーリングモデルの事業成長のポイントには、①高いチャーンレートが企業成長を阻害するということ、そして②アップセルにかかるコストは、新規顧客獲得よりも非常に小さくて済むFrederick Reichheldが提唱したとされるいわゆる「1:5の法則」)ということがあります。

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従ってチャーンレートを可能な限り低くして、可能な限り多くのアップセルを獲得することは、SaaS企業の効率的な成長において単純でありながら重要な要素となり、これを一体化した指標がNRRと言えます。

従来は、チャーンレートを低く抑えることが中心的に語られてきたカスタマーサクセスにおいて、これを前提として置きつつも、日本でも更に収益貢献を求められるように変化が生じていることの現れと言えます。こういった変化を「カスタマーサクセス2.0」と称することがあります。

カスタマーサクセスによる収益貢献の程度がわかる

前述の通り、NRRはアップセルとチャーンとを内包した指標になっているので、端的に言えば、カスタマーサクセス内で「赤字なのか、黒字なのか」がわかりますその意味では、若干表現方法の違いはありますが、以下の記事でご紹介したネットレベニューチャーンレートとも担う役割はほぼ同じです。

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このため、どういった期間で集計するかを問わず、まずはNRR100%を超えることをまず目指すべきということになるでしょう。

NRRにおいてベンチマークするべき数値は?

日本のSaaSビジネスの場合、あまりNRRNDRが公開されていません。一方で米国だと主要SaaSは、決算資料でNRRを公開していることもあり、(市場環境などの違いはあれ)一定の参考になります。
情報を公開している成長著しい(主に米国)企業のNRRは、平均的に120%を超えてきています。一つの目安になるでしょう。

NRRを活用する際の注意点

あくまでも投資家に向けた指標、が第一義的

上記でもまとめたことからもわかるように、NRRは対投資家という観点では、きちんとカスタマーサクセス起点で成長できているかをパッと把握できる非常に有用な指標と言えます。また、社内外におけるプレゼンスを向上する手段としても非常に有用でしょう。

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ではカスタマーサクセスにとって、この指標はどう活用していくべきものでしょうか?

筆者の感覚としては、NRRだけでは、取り回しのしずらさを感じます。つまり、特にシリーズABにかけての企業だと、特にアップセルの発生はまだまだ安定しないことが多く(複数プロダクトがなければそもそもクロスセスは観念し得ない)、単月のNRRを見て一喜一憂しても仕方ないことが多いように思われます。その点で、年間のNRRは、そういった凸凹をならして全体像を把握するには有用と言えるでしょう。ただ、その一方で、数字が出揃うまでに1年かかりますし、その間にプロダクトや施策が大きく変化することも多いスタートアップにおいては、慎重に使う必要があります。

具体的アクションは、他の指標と組み合わせて判断する

加えてカスタマーサクセスチームでは、NRRだけを見ても具体的なアクションが定まる訳ではない、ということに注意が必要です。

前述の通り、チャーンとアップセルを内包した指標であるため、個別具体的なアクションをとる際には、更にこの数値のブレイクダウンが必要になります。例えば、NRR115%ある場合、一見すると成長は順調に見えますが、チャーンレートが5%あるのだとしたら、BtoB SaaSの場合は問題ありで、カスタマーサクセスチームは早急にここを改善するために動くべきでしょう。こういったことはNRRだけを見てもわかりません。

あくまでNRRを総合的評価の指標として用いつつ、個別のアクションを実施するために、チャーンレートやアップセルレートをKPIとして計測しておくことが必要ということになるでしょう。

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まとめ

NRRSaaS において非常に重要な指標とされるようになり、日本のカスタマーサクセスでも収益増加への貢献を強く求められるようになりました。言い換えるとCSSaaSにおける重要度は更に高まっていると言えるでしょう。

筆者も含めて、カスタマーサクセスへの期待を裏切らないような取り組みを継続して行きたいと感じています。この具体的な取り組みについては、別途まとめていく予定です!