広範囲ゆえ見極め必須!カスタマーサクセス関連業務10項目の全体像

  • カスタマーサクセスのコアに当たる業務とその周辺に存在する関連業務

はじめに

みなさん、こんにちは!

今回は、カスタマーサクセスの組織の業務範囲とその役割分担を定めるにあたって、カバーする可能性がある10個の業務をまとめていきます。全体像は以下のイメージです。

関連性は実戦で結んだものが相対的に繋がりが強い。

誤解のないように付記すると、これらが全て完璧にできていなければならないということではありません。組織の規模に応じて未着手の業務があったり、他の部署が担当しているケースも当然ありますので、そういった前提で今自分たちに足りていなものがあるかを確認するイメージでご覧頂けると良いと思います。

カスタマーサクセスのコア業務(サクセス業務)

まずはカスタマーサクセスの中核的な業務、「コア業務」をご紹介します。このコア業務は、オンボーディングからアップセル・クロスセルまで、顧客のサクセスに直接的に結びつく業務を指しています(本ブログでは、これを総称して「サクセス業務」と呼びます)。

なお、このサクセス業務については、特定の企業を長期に渡って担当する役割分担の仕方もあれば、各フェーズごとに担当を明確に切り分けている場合もあります。

①オンボーディング

まずは、顧客が体験するカスタマーライフサイクルの一番最初のフェーズで、当該プロダクトやサービスを活用することについて、顧客を軌道に乗せるプロセスです。この業務はどの企業でも、CSが担っているものと思われます。

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実際のアクション内容の詳細は、上の記事に譲りますが、基本的にカスタマーサクセスに必要とされる知識が必要なことはもちろんですが、一定の期間内に必要なアクションを完遂する必要があるため、CSMプロジェクトマネジメントの基礎的な知識も持っておくとより実践的なアクションができるようになると思われます。

②リニューアル

リニューアルは、契約更新のプロセスです。
月単位または年単位での契約を更新する機会を良いタイミングとして、(打ち合わせなどを設定し)顧客とコミュニケーションをとるケースが多いでしょう。

必ずしも契約更新のタイミングとは限りませんが、 QBR といわれる自分達のプロダクトから生み出した成果について紹介、シェアすることもリニューアル業務においては非常に重要な要素と言えます。

③アップセル・クロスセル

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顧客が同一のプロダクトの上位のプランに変更したり、新たなオプション機能を購入すること(アップセル)や、別個のプロダクトを購入すること(クロスセル)で、顧客から頂く金額を上げていくアクションになります。 NRR の重要性が上がってきたように、CSの企業の成長への貢献を求められる現下の状況では、非常に重要な業務となります。

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ここまでのフェーズと異なり、アップセル・クロスセルは、セールス的要素が強く、上記の業務とはやや求められるスキルが異なることもあり、企業によってはアップセル・クロスセル専門のチームを作っているケースもあります。

カスタマーサクセスのエッセンシャル業務

以下では、上記で示したいわゆるサクセスに直結するルーティン業務ではないものの、顧客のサクセスと非常に重要な関連性を持った業務、エッシェンシャルな業務をご紹介します。ここでご紹介する業務は、マネージャーやCSチームのごく一部のメンバーが担当していたり、そもそも他部署に切り出していたりするケースも多いでしょう。

④戦略構築

カスタマーサクセスにおいても戦略構築は勿論必要です。特にリソースの限られているスタートアップやベンチャーにおいてどの施策にリソースを割くかは非常に重要な意思決定を伴います

正直なところ筆者もそうでしたが、いわゆる「一人CS」だと、顧客への対応だけで日々の時間を取られてしまうので、中長期も見据えた戦略の構築は非常に難しいですが、二人、三人とリソースが増えてきたら、(それでも時間がなかったりしますが)きちんと時間をとって半年後、今期、今月、今週、今日チームが注力すべき戦略を定めていくようにしましょう

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⑤Ops(Operations)

近年は、ベンチャー、スタートアップ企業を中心に、オペレーションを研ぎ澄ますことにより、効率的に業務を遂行することを重視する傾向が強まっています。SalesOpsやBizOpsといった言葉と並び、「CSOps」も認知度が上がってきており、関心が高まっている領域です。

その内実としては、多くの場合、CSが用いるツールの最適化やデータの分析を行うことから始まることになりますが、本来はCSの戦略、ひいては事業戦略の遂行に際してぶつかる課題を、オペレーションの切り口から解決していくことがその業務の中核です。よって意外かもしれませんが、戦略構築の業務にかなり近いところで活動する業務になります。

⑥イネーブルメント

プロダクトやターゲットとする業界によらず、CSはコンサルティングの性質も含むことが多いと思われます。この技量はややもすると属人化してしまい、組織によって「できる」メンバーと「そうでない」メンバーを生んでしまう可能性があります。

こうした問題を解決するためのメンバーの育成施策がイネーブルメント(”Enablement”)と呼ばれます。

特に立ち上げ期のCS組織においては、新たに入社したメンバーがどのようにキャッチアップして「一人前」になったのかを検証し、いわば帰納的に、特に有効に機能した施策やコンテンツを一般化して、パッケージ化してみると良いでしょう。これを次に入社してきたメンバーに適用して、一定の水準以上に引き上げることができるかを試行し、より精度の高いものを仕上げていくPDCAを繰り返していきます。

⑦コンテンツ業務

SaaSのプロダクトは「永遠のβ版」と称されることもあるように、常にアップデートされていきます。その一方、このアップデートを常にキャッチアップできている顧客の方は、非常に少数だと思われます。こういった状況において、コンテンツは新しい機能の紹介、そしてそのベストプラクティスを顧客に伝えるために重要な役割を担います

特に近年では、顧客とのコミュニケーションの量を、ターゲット毎に最適化するために活用されることも多いです。

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⑧カスタマーマーケティング

一般的なマーケティングと異なり、既存の顧客に対してのマーケティング活動を指します。その中心的な目的は、アダプションやその先のアップセルにあります。

他方で、CSと顧客の1対多のマーケティング活動やコミュニケーションだけでは、一方的な情報の流れにしかならないため、CSが積極的に情報発信を継続しない限り、マーケティング活動の量を担保できなくなってしまいます。

このため、近年ではCSからユーザーに向けた情報発信だけではなく、ユーザー間の情報の環流を促すユーザー会やコミュニティの注目度が上がっています

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⑨サポート

いわゆるカスタマーサポートの業務です。
カスタマーサクセスを説明する上でよく比較対象として挙げられる通り、SaaSのサービスにおいてはプロダクト内に設置されたチャットで問い合わせを受け、回答するという比較的受動的な動き方が中心となります。

このサポート業務の内容や遂行する上での注意点などは、下記の記事に譲りますが、必ずしもCSチームではなく、上記のような性質の違いなどから、別途組織されたサポートチームが担っていることも多いです。

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⑩プロダクト関連業務

最もCSの本来的な業務からは遠くなるものの、筆者は非常に重視しているのがこのプロダクト関連の業務です。
具体的には、顧客から受けたプロダクトにおける要望を受け、必要に応じてプロダクト開発チームに共有することです。

実際のアクションは以下の記事に記載していますが、最も顧客と意見を交わす機会がある立場を活かして、生きた顧客のインサイトをプロダクト側に返す仕組みができれば、組織全体として非常にプロダクトの進化に向けた意思疎通が緊密にとれるようになります。

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まとめ

お読み頂き、ありがとうございました。
本記事公開時点では、まだ筆者もイネーブルメントは必ずしも着手できていません。ただ、コンサルティングによる付加価値の提供が重要性を持つプロダクトにおいては、非常に重要な要素になるとも感じており、本記事をきっかけとして取り組みを深めていきたいと考えています!
皆様にとっても何か業務をよくするきっかけにして頂けたら嬉しいです!