- カスタマーサクセスによく求められる汎用的な4つのスキルの内容
- 4つのスキルを獲得するための具体的方法の例
はじめに
みなさん、こんにちは!
カスタマーサクセス(以下、CS)をやっていると、これがCSに必須の特有のスキルだ、と感じることは殆どなく、寧ろこれまでの経験によって培ってきたスキルが応用できることがあると多々感じます。そこで今回は、特にBtoBの CSM (カスタマーサクセスマネージャー)によく求められ、身についていたら役立つ4つの汎用スキルを、筆者自身の経験も踏まえてまとめていきます。
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CSMに求められる4つの汎用スキル
#1 プロジェクトマネジメントスキル
「プロジェクトマネジメントスキル」は、ある目的に向かって進行するプロジェクトの旗振り役となって、予め定めたスケジュール内でプロジェクトオーナーが求めるアウトプットを提供するための管理を行うスキルです。
CSで言えば、継続的なプロダクトやサービスの活用により顧客のサクセスを達成できるようにすることがミッションであり、上記で言うところの「アウトプット」になります。
その意味で、カスタマーサクセスにおいては、サクセスに至るまでの比較的長期のプロジェクトを遂行する「プロジェクトマネジメントスキル」が、組織の規模やフェーズに関わらず最も必要なスキルになるということに疑いの余地はないのではないでしょうか。
下記の記事でもまとめた通り、 SaaS の導入時には社内調整をはじめとして、プロジェクト推進にあたって顧客が苦労を感じるポイントはいくつかあります。こういったケースでは特に、社内のステークホルダーへの説明ポイントを提供しつつサポートできるCSMのプロジクトマネジメントスキルが活きると思われます。
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#2 サポートスキル
「サポートスキル」は、困っている顧客に対して、その意図を汲み取りつつ解決策を一つ、願わくば複数提示して、親身になってハードルを乗り越えるサポートをするために必要なスキルです。日本のCSMには、このスキルも強く求められることが多いでしょう。
もちろん定義の上では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは大きく異なる職種であり、求められるスキルも異なることから、一定の成熟度の組織においては、両者を別のチームとすることが通常です。その一方で機能分化が未成熟なスタートアップを中心とする企業では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの境界は曖昧になりがちです。CSMもカスタマーサポートをやる場合には、直接的にこのスキルが必要になります。
サポートにおいて重要なスキルの具体例は、以下の記事にまとめていますので是非ご覧ください。
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#3 セールススキル
「セールススキル」とは、製品やサービスをより多くの顧客に(場合によってはより高い金額で)、購入してもらうことをやり切るスキルを指しています。
従来は、チャーンレートを低く抑えることが中心的に語られてきたカスタマーサクセスですが、 NRR の指標としての重要性が高まっているように、近年CSは、アップセルやクロスセルを通じて収益貢献を求められています。こういった変化を「カスタマーサクセス2.0」と称することがありますが、まさにCSMにはセールススキルが明確に求められるようになったと言えるでしょう。
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そもそもセールスのスキルは、プロジェクトマネジメントやサポートのそれとは全く異なります。加えて、サポートマインドが強めのCSMにおいては、顧客に対して更なる支払いを伴う上位プランやオプション、別プロダクトの提案をすることは、やや二重人格的な動きをすることになる場合もあります。
こうした観点を踏まえて、CSMのスキルとしては求められることがあるものの、実際にはオンボーディング担当とやサポート担当とアップセル・クロスセルの担当とを明確に(チームや人単位で)分けているケースも多いのが現状です。
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#4 技術スキル
本稿における「技術スキル」とは、システムが動く仕組みや構造を顧客に説明可能なレベルで理解できるスキルを指しています。
特にクラウドサービスのカスタマーサクセスにおいては、自社のプロダクトに関する圧倒的な理解が求められます。ただ、それ自体は、自社プロダクトのヘルプページを読むなどすれば大抵は達成可能で、特段のスキルは必要ありません。
その一方で基本的なプロダクトの「仕組み」の理解は、実は一歩踏み込んだアクションが必要で、説明できるようになると、顧客とのコミュニケーションの際に非常に役立ちます。
例えばプロダクトが普段と異なる挙動をしている場合に、サーバーサイド側とフロントエンド側のどっちにその原因がありそうか(正確に把握するのはQAチームやエンジニアの業務ではありますが)、CSMも一定の当たりをつけられるようになると、その場で顧客の問いに答えることが可能になることもあるでしょう。プロダクトの理解も一段階進み、結果としてコミュニケーションを通して顧客の信頼感を高めることも可能になります。
CSMが活用する「SQL(エスキューエル、シークェル)」とは?
最も普及しているデータベース言語の一つで、データベースから必要な形で情報を抽出することができる言語です。
実務では顧客の利用状況を分析する際などに活用余地があり、基本的な理解さえできれば、必ずしもエンジニアバックグラウンドがなくても活用することができます。特にシードからシリーズAくらいのアーリーステージのスタートアップのCSMでは、実は叩くことができるという方も多い印象で、知っておくと役立つ場面があります。
まとめ -全てが必須というわけではない-
ここまでCSMにおいて必要とされることが多いスキルをまとめて来ました。
もっともこれらのスキルが全てカスタマーサクセスになった時に必要というわけではありません(CSへの転身を考えていらっしゃる方には特にお伝えしたいです)。むしろ最も幅広いスキルが必要とされるのは、組織の立ち上げ時であって、組織が大きくなったあとは、それぞれ自分のポジションや職務のコアとなるスキルを深めて専門性を高めていくことになります。
自分も今でこそ、組織の中で発揮すべきスキルは、マネジメントに寄りつつありますが、CSの立ち上げ時は違いました。最初は今回挙げた4つのスキル全てが必要になり、かなりその仕事の幅広さに苦労しました。幸い自分には、前職で複数回社内プロジェクトを担当した経験があったことから、基礎的なプロジェクトマネジメントの方法論は、カスタマーサクセスになった時から、一定程度は頭にありました。
その一方でセールス的なスキルは、全く経験がないことから、実際に顧客と話をしていく中で、ゼロから身につける必要がありました。どのように身につけようと取り組んだかは、また別途記事にまとめようと思います。
技術的なスキルは、オンラインでコーディングが学べるサービス(筆者の場合は「Progate」を活用)を実際に軽く触ってみたり、情報セキュリティマネジメント試験にチャレンジしてみるなどすることで、一般的なレベルの知識を把握するようにしていました。細かい知識を知るというよりも、エンジニアが普段触っている「コード」の雰囲気を掴んだり、セキュリティの通常求められる水準感を知るために有用です。
Progateはオンラインでプログラミングを学べるサービスです。プログラミングを学んでWEBアプリケーションを作ろう。…
こうして見ると、やろうと思うと非常にキャッチアップには非常に労力を要する、まさしく「総合格闘技」感のある職種がカスタマーサクセスです。ただ、その一方で業務で必要となるスキルの幅広さがゆえに、きちんと向き合うことで自分の可能性を広げてくれる職種とも言えると思います。