顧客の成果と進捗を見える化するQBRとは?

  • QBRの定義、目的とその内容
  • QBRを実施する際に注意しておくべきこと

はじめに

みなさん、こんにちは。
カスタマーサクセス(以下、CS)の顧客とのコミュニケーション方法は様々ありますが、一つの重要な機会と位置づけられるのが、いわゆるQBR(Quarterly Business Review)です。
本記事では、このQBRの内容や注意点について、筆者が考えていることをまとめていきます。

QBR(Quarterly Business Review)とは

QBRの定義

QBR とは、以下の通り、顧客と開催する定期的なミーティングで、主としてプロダクトを導入したことによる効果やCSチームによる今後の更なる支援の方法や内容について議論をする場です。

It’s a regular meeting with your customer to discuss project impact (metrics, value one, SLAs, current initiatives, etc.) and how you can continue to support them and help them be successful.
The Seven Pillars of Customer Success -A Proven Framework to Drive Impactful Client Outcomes for Your CompanyWayne McCulloch

QBRの目的

QBRは、上記の定義からもわかるようにいくつかの目的があります。

もちろん最終的には、 LTV の向上が目的になりますが、一段階ブレイクダウンすると、まず①CSが顧客の状況や抱えている問題を捉えることです。
プロダクトから活用状況は捉えることが可能ですが、その一方で、背景にある顧客が感じていることや顧客の置かれた環境や状況などは、実際にコミュニケーションをとってみないとわからないことも多いです。こうした点をキャッチアップできるQBRは非常に貴重です。これがはっきりとわかれば、顧客のサクセスに向けて、次にとるべきアクションの解像度がより上がります。

次に、意外に重要なのが、②顧客が享受できている(はずの)便益を顧客に認識してもらうことです。
もちろん顧客は、プロダクトを使う中で効果を感じているはずです。ここに対して、CSMから更にプロダクトから取得できる定量的な情報や他の顧客の一般的な活用度合いとの比較という視点を提供することで、より客観的に顧客が享受できている便益を証明することができます。

QBRのトピック

QBRのトピックとしては、下記の4つが一般的には考えられるでしょう。

  1. 現状の顧客の成果の確認
  2. (必要に応じて)現状の顧客を取り巻く環境の変化の確認
  3. 当初定めていたサクセスと現状との差分を確認
  4. (達成していない場合には)サクセス達成のための、改善点を抽出

まずは、プロダクトの活用状況を踏まえた、①現状の顧客の定量・定性的な効果を確認します。ここで前述した顧客が享受していることを実感している便益を確認することができます。

ここで、もしCSMの認識と異なる部分があれば、その原因や理由となる②現状の顧客を取り巻く環境の変化を確認します。例えば想定していたよりもプロダクトを活用するメンバーの数が少ない時に、それが顧客の組織変更に起因していたなど、顧客を取り巻く環境面でCSM側に認識の齟齬がないかをチェックします。

そして、③当初目指していた顧客サクセスとどれくらいの差分があるのかを認識します。例えば、特に導入してから半年前後は、QBRを実施すると「顧客がいわゆるライトサクセスの状態にあることがわかったが、その先のディープサクセスの状態には至っていないことがわかった」ということが多いかもしれません。

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上記を踏まえて、④サクセスに向けて改善できるポイントがあるのか、それは誰が、どのようにアクションすることが必要なのか、といったことを議論することになります。この中には勿論CSM側の支援の方法を改善することも含まれますし、プロダクト側の改善要望も含まれるでしょう。

ここを掘り下げていくことが、メールなどのテキストベースでは難しいポイントで、QBRを実施する価値が出る部分です。このためこのパートになるべく時間を割くことが望ましいです。

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QBR実行の際の考慮ポイント

QBRは、顧客とのコミュニケーションの一手段

なにも、QBRだけが顧客とのサクセスに向けたコミュニケーション手段ということではありません。

例えば日常的なチャットサポートやプロダクトから取得できる定量的データだけでも、顧客の状況やこれに対してとるべきCSMのアクションは大抵掴むことができるでしょう。

その意味では、筆者としては、QBRだけが非常に重要ということではなく、あくまで顧客のサクセスのための一つの手段にすぎません。むしろ通常1−2時間程度の打ち合わせとなるQBRでできることはどうしても限られてしまうので、QBRでディスカッションする内容は、本当に顧客と直接話すべき内容なのかを見極めるべきでしょう。

EBRとの違いは?

EBRExecutive Business Review)は、その名の通り、最終の意思決定者を主なターゲットとして行う、より目線の高い(≒経営レベルにかかる)事項をトピックとする打ち合わせを指します。つまり、QBREBRとでは、その対象者とトピックが少し異なるという整理になります。このため、必然的に開催すべき対象となる顧客もやや狭まるとともに、その開催頻度もQBRに比べると少し期間をおいて実施されることが望ましい(半年〜1年に1回程度)ということになるでしょう。

QBRは四半期に一回、実施しなければいけないのか?

確かにQBRの定義の通り、通常は企業の活動サイクルのわかりやすい目安である四半期を、適切な開催頻度と置くのが良さそうではあります。

しかし、その一方で、それ以外の手段でも十分顧客の情報が掴めることから、必ずしも四半期にこだわる必要はないと筆者は考えています。言い換えると、プロダクトの性質を前提としつつ、みなさんが定義する顧客セグメントと各顧客が位置するカスタマージャーニー(カスタマーライフサイクル)のフェーズに応じて設定するのが良いのではないでしょうか。

例えば、一定の顧客数を抱える中で、(定義は各社によって変わりますが)SMBと言われる中小規模企業に対しては、必要性とそのMRRの金額感に鑑みて、CSチームのコストをかけないこととし、QBRに相当する打ち合わせは年に1回とするという判断も十分考えられるでしょう。
もっとも、SMBであってもアダプションフェーズにいてエクスパンションやアップセルの可能性が大いにあると判断させる顧客には、逆に特定の期間はQBRをきちんと四半期に実施するという判断も可能でしょう。

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まとめ

本記事では、QBRについてまとめてきました。
QBRは、成果が出ていることを目に見えるように表現をするコミュニケーション方法の一つですが、実際にやってみると顧客にも新たな気づきを提供できる貴重な機会だと思います。
是非みなさんも、QBRをうまく活用して顧客とのコミュニケーションを深めていってください!