客観性がカギ!カスタマーオンボーディング判定基準の作り方

  • オンボーディング判定基準作成時の基本的な考え方
  • オンボーディング判定基準の具体的な作り方

はじめに -なぜオンボーディング判定基準が必要なのか?-

みなさん、こんにちは!
今回は、カスタマーオンボーディングの完了判定を行う上で必要となる判定基準の作り方についてまとめていきます。

そもそも、どうしてオンボーディング判定基準が必要なのかといえば、一般的にオンボーディング完了がチャーン防止やアップセル創出の前提となることが挙げられます。このため、オンボーディング完了が(チャーンの防止も含めて)事業の成長のベースを作り出すための重要なKPIとして評価され、この「オンボーディング完了」について管理可能な基準を設けることが必要になります。

「オンボーディングレート」はどのような意味で重要か?

SaaSスタートアップのアーリーステージでは、シリーズAなどの調達に当たり、まずチャーンレートが重要視される傾向があります。上記の通り、オンボーディングが上手くいっていない顧客がチャーンしやすいという傾向が一般的にも言われている中では、オンボーディングレートがチャーンレートの中間指標として機能すると評価することもできるでしょう。
その意味で、オンボーディングレートをトラッキングできる状態にしておくことは、 SaaS にとって必須なのです。
関連記事

カスタマーサクセスにとって重要な3つのチャーンレートの内容 3つのチャーンレートの意味と計算方法 3つのチャーンレートの使い分け方 はじめに 今回はカスタマーサクセスの活動の上で非常に重要な要素であるチャ[…]

判定基準を作る際の基本的なアプローチ

またこのオンボーディング判定基準は、各社・各プロダクトによって多種多様で、ある意味恣意的なコントロールも可能になる数字です。その意味でも「基準」と言っている以上は、判定方法には客観性が担保されていることが望ましいと言えるでしょう。
言い換えると、上の図のように、定量的な指標を一つまたは複数組み合わせて、一定の条件を満たした場合をオンボーディング完了とするイメージです。

基準はいつから作っておいた方が良いのか?

各プロダクトによって、どういった条件、タイミングでオンボーディング完了を判断すべきかは、大きく異なります。プロダクト利用の設定を完了したら「オンボーディング完了」としているケースもあります(むしろ多いかもしれません)。

冒頭でもご紹介した通り、「オンボーディング完了」した後に、その顧客がどのような道を歩むのかが重要ですから、むしろ自社のプロダクトを上手く活用しているユーザーが何社か出てきた時に、そういった顧客がどういった過程を経たのかを把握してからオンボーディングの判定基準を作ることを試みるのが望ましいと筆者は考えています。

判定基準の作り方

①オンボーディングした状態を言葉で定義する

まずは、やや帰納的なアプローチで、具体的に上手く活用している企業を思い浮かべつつ、どういった企業がオンボーディングをしていると言えるのかを言葉で定めてみると良いでしょう。

具体的には、以下の記事でも説明しています。

関連記事

カスタマーオンボーディングの定義 オンボーディングプロセスの目的 オンボーディングプロセスを構築するにあたって重要なこと はじめに みなさん、こんにちは! 今回は、カスタマーライフサイクル、そしてカスタ[…]

この記事では、例として「顧客がプロダクトの基本機能を知って、その便利さを実感し、繰り返し使う習慣がついている」状態をオンボーディング完了したと定義します。

②定めた定義をブレイクダウンして、指標を当てはめる

ここが、冒頭で記載した、基準の客観性を担保するために最重要のアクションになります。
先ほど定義した言葉を、要素毎にブレイクダウンし、それぞれの要素の良し悪しを測ることのできる指標を当てはめられるようにします。

例えば、上記で定義した例ならば、

  • (a)「プロダクトの基本機能を知って」
  • (b)「便利さを実感」
  • (c)「繰り返し使う」
  • (d)「習慣がついている」

といった4つの要素にブレイクダウンができるでしょう。
それぞれの要素ごとにポイントを振ったり、OK/NGを判断したりして、その総合によって最終的なオンボーディングの完了を判断していきます。

以下では、具体的に各要素を測ることができる指標の例をご紹介します。

◆プロダクトの設定状況

こちらは、多くのプロダクトでオンボーディングの判定基準となっているでしょう。
初回ログインをした、2段階認証の設定をした、特定の基本機能を触ったことがあるといった初歩的な設定や操作をチェックポイントにするイメージです。

上記の基準であれば、この指標で(a)「プロダクトの基本機能を知って」いるかを測ることができるでしょう。

◆プロダクトの利用状況

同様に多くのプロダクトで採用されている基準だと思います。
全体の何%のユーザーがログインしているのか、そのうち一週間で複数回ログインしたのは何%なのか、また当該プロダクトで重要と位置付けられている機能の活用回数や頻度はどの程度か、といったプロダクトの活用状況に関するデータです。

上記の基準であれば、(c)「繰り返し使う」や(d)「習慣がついている」といった点は、この利用状況のデータを使って良し悪しを判断することができるでしょう。

◆アンケート

上記のような指標だけでは、プロダクトによっては顧客の正しい状況を把握できないことがあります。つまり(利用頻度はともかく)顧客がどう感じているか、という要素が抜けているからです。

顧客の感じ方を定量的に置き換えたい場合には、アンケートを活用するのがオススメです。例えば5段階評価の質問を投げかけることによって、顧客の感じ方を1〜5の数字に置き換えて定量的に集計することができるようになります。

上記の基準であれば、(b)「便利さを実感」しているかという点を、アンケートで測ることができるでしょう。

③各指標の重みづけを決める

最後に、オンボーディングを判定する際に、上記の各要素で算出された指標の結果を、どれくらいの重みで使うかを考えます

例えば、利用状況を重視する場合なら、プロダクトの設定状況:プロダクトの利用状況:アンケート=1:2:1で取り扱う(多少アンケートなどのスコアが悪くても多めに見る)といったイメージです。

ただ、ここまでで既に複数の指標を扱っていることもあり、あまり複雑な重みづけを行うというよりかは、各指標においてOK/NGを判断することにし、全てがOKならオンボーディングにするという考え方でも十分なのではないかとも思います。

まとめ

上記でご紹介したオンボーディング判定基準の定め方は、オンボーディング判定基準をかなりアダプションフェーズに寄せたイメージになっています。

このため、今回はかなり判断基準としてもリッチとなっていますが、ここを作り込めると、チャーンレートは劇的に抑えられるのではないかと思いますので、是非チャレンジしてみてください!