プロダクト利用データから始めるヘルススコアの作り方

  • 顧客のヘルススコア作成の目的
  • ヘルススコア作成に当たって活用できる指標の例
  • ヘルススコア作成の手順
  • プロダクト利用率のヘルススコアへの反映のさせ方

はじめに

みなさん、こんにちは!

今回は、カスタマーサクセスにとっての重要な指標となる顧客の「ヘルススコア」の作り方について、特にプロダクト利用率の活用方法を掘り下げながらご紹介します。

カスタマーサクセスに必要な指標の全体像はこちら!

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ヘルススコア作成の目的

まずヘルススコアを作成する目的というと、以下のポイントが挙げられるでしょう。

  • チャーン予備軍を発見して、チャーンを防ぐ
  • 上手く活用できているユーザーを発見して、アップセルに繋げる
設計次第ではありますが、特に前者のチャーン防止に役立つ指標としてヘルススコアを活用しているケースが多いのではないかと思います。

ヘルススコアの基本的な作り方

ヘルススコアを構成する要素・指標

前提として、顧客とのタッチポイントは、全てスコアを構成する要素となり得ます
ただし、あくまで目的はチャーン防止やアップセルの拡大が予想されるユーザーの発見なので、スコアの算式を無理に複雑にすることはせず、その目的を達成する限りで相関関係がある指標を中心にヘルススコアへ反映させるべきでしょう。

具体的な要素は、顧客のセグメントを分けることを前提として、以下のようなものが考えられます。

  • プロダクトの利用状況
  • アカウントの付与率
  • 打ち合わせ設定回数
  • サポートへの問い合わせ回数
  • NPS®️スコア
  • アップセル金額
  • コンテンツの閲覧回数
  • ウェビナーの閲覧回数
  • イベントへの出席率 etc
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各指標を活用してスコアを作成する

目的に適合する指標を抽出したら、それぞれの指標を組み合わせてスコアにしていきます。

それぞれの指標をどのように重みづけしてスコアに反映させていくかが重要になりますが、この場合、やはりスコアの中核を成すのは、プロダクトの利用状況です。

利用状況を見れば、そもそもあまり使っていないことや、使っていても本来想定している使い方ではないなどがわかるため、チャーン予備軍は炙り出しやすくなります。プロダクトを使っていないにもかかわらず、周辺のコンテンツを沢山閲覧しているからチャーンしない、というケースは通常想定し難いので、ヘルススコア作成に当たっては、プロダクトの利用状況を重視することが望ましいでしょう。

プロダクト利用状況「以外」の指標は、どのように活用したらよいか?

そもそもプロダクト外のデータは取得することや管理すること自体が困難な場合も多いと思います。このため、筆者は、顧客の数と(SMB・エンタープライズなど)属性が多層化したタイミングで、プロダクトの利用状況以外の指標も積極的に取り込むのが良いと考えています。

このプロダクト利用状況以外の周辺領域も数値が良好な顧客は、カスタマージャーニーでいうところの「愛着(ロイヤリティ)」へ到達できる可能性があると思われます。言い換えると、これらの指標はロイヤリティのステージに到達しうる顧客かを示す指標としての活用余地が大きいことから、ある程度顧客数が増え、カスタマーサクセスの運用自体が軌道に乗ってから着手するのがオススメです。

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なお、最終的に出来上がるスコアのイメージは、10-1の10段階評価でも良いですし、「◎・○・△・×」のようなわかりやすいものでも、全く問題はないと思います。スコアが出た後に、 CSM のネクストアクションが明確になっていることの方がはるかに重要です。

一度決めたら3ヶ月〜半年は運用してみる

一般的に、チャーンレートは遅行指標になるので、設定したヘルススコアがユーザーの状況を精度高く表しているかは、ある程度期間を経過してみないとわかりません。

このため、一度「これ」とスコアの仕組みを決めたら、最低3ヶ月くらいは変えずに運用してきちんとデータを蓄積するのをオススメします。

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プロダクト利用率をベースにしたヘルススコアの作り方

ことプロダクトの利用率を重視してヘルススコアを作っていく場合には、どのようにヘルススコアに活用するデータを絞り込んでいくのが良いのでしょうか?

まずプロダクトの「バリュープロポジション」を知る

顧客の生の声を聞くことができるカスタマーサクセスで、ここがあまりわからないという方は殆どいないと思います。

結局自社のプロダクトの強みに当たるバリュープロポジションを支える機能の活用頻度が低いユーザーは、簡単にチャーンしてしまう可能性があります。このため、改めて自社のプロダクトの強みはどこにあるのかを認識し、その上でスコアに役立つ指標を抽出すると良いでしょう。

具体的に望ましい使い方を表現できる指標を抽出する

上記のバリュープロポジションを認識した上で、どのように使うのが望ましいのか、そしてその通りに使っているか否かを表す指標は何か、を考えていきます。よく用いられるのはログインしたユーザー数(DAU:Daily Active User)ですが、大抵のプロダクトではログインしただけでは足りず、その中でどういったアクションをしたかが重要になると思われます。

例えば、チャットツールの SaaS であれば、プロダクトを通してのコラボレーションが重要なので、その組織内で日次で投稿されるメッセージの数やアカウント保有者の何%がメッセージを投稿しているかが重要な指標になるでしょう。またクラウドストレージのSaaSであれば、1日あたりにアップロードされたファイル数や容量、または発行された共有リンクの数がキーとなる指標になるかもしれません。

具体的なヘルススコアの作成例は?

名刺管理を中核サービスとしているSansanでは、WAU(Weekly Active User)や登録した名刺の数、オンライン名刺の設定数などをヘルススコアの構成指標としているようです。
かなり詳細に定めている印象なので、最終的なゴールとしては良いかもしれませんが、いきなりここまで到達する必要はないでしょう。

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ヘルススコアの作成は、完全にプロダクトごとにオリジナリティが必要な部分なので、同じジャンルに属するプロダクトでも、ターゲットやバリュープロポジションによってヘルススコアに用いる指標は異なる可能性が大いに考えられます。

このため、指標の選定や指標で満たすべき水準は、(上手く活用しているまたはチャーンした)各ユーザーの利用状況から帰納的に見つけていくしかありません。最初は自信がなくても、「えいや」で決めて、まずは運用してみることが重要です。

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まとめ

ヘルススコアは、カスタマーサクセスにとって非常に重視したい指標の一つですが、どのような指標が重要なのかは、プロダクトごとに異なるため、特に初期の段階では「本当にこれで良いのだろうか」という不安な気持ちになりがちです。

とはいえ、最初はどの組織も手探りにならざるを得ないと思いますので、本記事を参考にしつつ、まずはスコアの仕組みを作って実際の顧客の状況と擦り合わせてみましょう。この繰り返しでスコアの精度はどんどん上がっていくものと思います!