- 新卒がスタートアップで働くことのメリット
- スタートアップで働くメリットのウソとホント
- どんな新卒の方がスタートアップで働くのに向いているか
皆さんこんにちは!
昨今では、スタートアップを取り巻く環境が大きく変わりました。2022年現在の政権の後押しもあり、今から起業する方には参考資料も非常に豊富になっています。
そんな中で私の周りでも、スタートアップの経営者としてではなく、メンバーとしてキャリアをスタートする新卒の方が増えてきています。これ自体は上記のような環境の変化の結果といえ、キャリアの多様化という観点では非常に良いことだと思います。
他方で、自分が何人か新卒の受け入れをして一緒に働いてみて、本当にスタートアップからキャリアをスタートすること自体が良いことなのか、どんな方が向いているのか、自分なりの考え方をまとめてみます。
なお、本記事で指すスタートアップは、いわゆるシード期からシリーズA前後のフェーズにある企業を想定しています。
スタートアップで働くことのメリット
スタートアップの特徴は、①少人数組織のもとで②目まぐるしく変化するビジネスを作っていくことにあります。
①にともなって、一般的には、その企業の起業家、経営メンバーとも距離は近くなりやすく、彼らが経営するに当たってどういったことを考えているのかを直に感じることができると言われます。これは大きな企業ではなかなか体験できないことであり、特に将来的に起業を考えている方にとっては、スタートアップで働くことの大きなメリットと言えるでしょう。
これに加えて②では、経験の幅も非常に広げやすく、成長しやすいと言われます。例えば事業サイドであれば、例えばカスタマーサクセスからキャリアをスタートし、そこで顧客像を直に学んだのちセールスにキャリアチェンジする、といったこともそれほど難しくないと思います。
スタートアップのウソ・ホント
とはいえ上記のようなメリットは、あくまで一般論です。では実際のところはどうなのでしょうか?
スタートアップで働き、またそこで新卒を受け入れてきた経験を通して、以下では筆者の感じたことを書いてみます。
これは、物理的に人数も少ないので、本当であることがほとんどだと思います。
自社はもちろんのこと、同じような環境にいる他社の経営者ともコネクションが作りやすくなります。
ただ、これはあくまで環境がもたらすものであることに注意する必要があります。つまり、「自分が優秀だから、経営チームの近くで働けている」というわけではない(ことがほとんど)ということです。
これは一定規模以上の企業のバックオフィス(特に人事や法務)でも生じやすい誤解で、特にキャリアが浅いうちは、自分の価値を見誤り、結果として成長を止めてしまうことに繋がるので注意が必要です。謙虚に行きましょう!
これは常にホント、ということはないでしょう。そもそもこういったことを考えている方は少数であるとは思います。
確かに会社の規模が大きくなればなるほど、経営陣からの距離は遠くなります。その点ではスタートアップの方がメリットはあるでしょう。
他方で、大企業(一部の中小企業も含みます)では、教育の充実というメリットがあります。
スタートアップは環境は改善されたとはいえ通常資力は乏しく、仮にお金があっても教育へ割けるリソースは乏しいです。それはビジネスそのもの(プロダクト開発やマーケなど)へのリソース投下の優先度がどうしても高いからです。
ここは置かれている環境上、嘆いても仕方ないポイントで、どこかで常に教わることを期待してしまう方は、スタートアップに新卒で入ること自体を考え直した方が良いかもしれません。
時折、「スタートアップで働いている自分達はイケてる、大企業で働くのはイケてない」といった認識を持ってしまっている方がいらっしゃいますが、実はいちビジネスパーソン単位でみた時には、教育制度が整っていて、またいわゆる同期との競争原理が機能する企業の方が、短期で「一人前でイケてる人材」になれる可能性、再現性は高いのではないかと感じます。
ちなみに、ここで言っている「教育」とは、セミナー受講などによって得られる知識を想定したものではありません。もっと「実質的なバランス感覚」を指しています。
特に個人的には、スタートアップの自由さが先行して喧伝されすぎた結果、例えばどこまでがビジネス上許容され、どこからが失礼に当たるのかといったコミュニケーションの「型」や組織で働くに当たって自分にどういったアクションが求められるのかといった役割分担の視点について誤解が生じやすくなっているように思われます。
その結果として、スタートアップからキャリアをスタートする方はこうした常識的なバランス感覚を身に付けるスピードが半年から数年単位で遅くなるのではないか、と懸念しています。マネージャーとしては、一般論で伝えるのが難しい点でもあるので、ここにズレがあるなと感じたら即座に指摘しておきたいなと感じています。
この点も大きい規模の企業と比べて、ということになると思いますが、結論はかなり本人に依存すると思われます。つまり、本当でもありウソでもある、ということです。
ここでいう成長を、「自立した一人前のビジネスパーソンになること」と定義すると、前述の通り、教育する地盤が整っている企業の方が、一人前になるスピードが早い可能性もあります。
加えて、スタートアップでは、プロダクト自体の開発以外は、通常大企業なら整っている環境や仕組み(プロダクトを販売する流れ、お客様をフォローする流れ、採用フローなど)をゼロから作り上げる仕事が多くなります。ゼロから作り上げること、考えることにはもちろん学びがあるのですが、結局はどこかの企業がうまくやっている方法をコピーする「車輪の再発明」になることが多いので、今から組み上げようとする仕組みの完成形を、予め中堅以上の企業で見ておいた方が、結果としては先回りになる可能性が高いです。
このため、スタートアップで早い成長を達成するためには、前述した経営チームとの近さを活かして、再現性ある事業の成長や円滑な組織化など、経営にダイレクトに影響する目線を取り入れて施策を実施することをオススメしたいところです。
上記に関連して、自分も含めマネージャー層が非常に注意したいなと思うのが、頭の回転が早く、手をすぐに動かせる優秀な新卒が入ってきてくれた時です。彼らは会社に貢献したいという思いの下、いろいろな仕事を引き受けて働いてくれるのですが、ややもするとそういったメンバーを「何でも屋」に仕立てあげてしまう恐れがあります。
もちろん最初のうちは好き嫌いなく業務につかせることが重要なのですが、ただでさえ雑多な仕事も多いスタートアップでは、そういった優秀な若手に、なるべく早いうちに「これだ」と思えるものを見つけられるようにするのが、マネージャーとしては重要だと考えています。
まとめ-結局どういった人がスタートアップに向いているのか?-
ここまで書いてきた通り、一般論として、確かに色々なメリットがある一方で、多くの方にとって新卒でスタートアップへ入るのは非常に微妙な選択にも思われます。
実際にどういった方が新卒からスタートアップに入社するのが向いているのか、あえて言うとしたら、
- 教えてもらうことを期待せず、常に自分で課題設定して解決していこうとする姿勢があって、
- それが世の中の常識とどれくらい離れているか(近いか)を比較する視点を持てる方
といったイメージになるでしょうか、ハードル高いですね…。自分が新卒だったときには難しかったです。
ただ、それは、あくまで「一般論として」です。
言い換えると、その方が生来スタートアップで働くことができるかという視点よりも、上記で懸念事項として挙げたような点をきちんと指摘・指導してくれるマネージャーが存在するなど人の力で克服できる可能性があること、または上記の懸念事項が存在してもなお、入社して働きたいと思うプロダクト・サービスを提供している企業なのかといった点から、スタートアップへの就職を考えてみると良いと思います。
こういった観点できちんと自分で判断して入社すれば、仮に入社後に上手くいかないことがあったとしても、踏ん張って成長を掴めると思います。
私から間違いなく言えるのは、スタートアップほど事業開発・運営をミクロ・マクロ双方の視点から体験できる環境はないということです。上記のような注意点を頭に入れて行動できれば、必ず新卒の皆さんでも成長することができるはずです。
最初のキャリアに迷われている方にとって少しでも参考になれば嬉しいです。